不耕起栽培とは

<岩澤 信夫>

 不耕起(耕やし起こさず)

 土を掘り起こしたり反転させたりして耕起することをしない農業の手法だということです。
「不耕起栽培」という言葉が誕生したのは、比較的新しく、愛媛県在住の福岡正信さんが作った造語なのです。
福岡さんが言葉を作って、その後、この言葉が農業で使われる公用語となったのです。
福岡正信さんの本はたくさんあります。読んでみてください。

 不耕起の歴史

 不耕起栽培の歴史はというと、日本だけのものではなく世界中にあります。
日本の稲作もそんな時代が太古にあったかもしれません。
日本で、イネを水苗代で育てて田んぼに移植するようになってから、まだ1300年ほどしか経っていなようだからです。
イネのルーツや稲作の歴史の本はたくさんあります。調べてみてください。
日本の農業で耕すことが盛んになってきたのは、たたら製法の技術が確立して、製鉄の技術が各地に普及した後だといわれています。  農具の一部に鉄を使うことができるようになった為だという説です。
世界中に、さまざまな耕さないで行う栽培技術がありますが、総称して「不耕起栽培」と呼んでいます。
種を直接播く直播き技術や、私達がやっているような苗を作ってから移植する技術などがあります。
ですから私達の選んだ方法は、正式には「不耕起移植栽培」というのです。
イネだけではありません。 不耕起栽培は野菜作りにもあります。
たとえば、アジア地域などでタロイモなどの焼畑農法をする際、棒で穴を掘り種芋を植えていました。
これも古くから続く不耕起栽培のひとつでしょう。 中国の奥地でも稲作の不耕起栽培があったようです。

 不耕起栽培との出会い

私が不耕起栽培に関心を持ったのは、オーストラリアの農業の文献を読んだのがきっかけです。
その後、福岡さんの「自然農法 緑と哲学の理論と実践」(昭和51年 時事通信社刊)に出会いました。
当時の日本でも、福岡さんだけでなく、各地で点々と独自の不耕起農業を続けていた人たちがいたようです。
その中には、今日も引き続き実践をされている方がいると思います。

 珍しい農法ではない不耕起栽培(:No Till Farming)

現代においては、不耕起栽培は決して世界の中で、決して珍しい農業技術ではありません。
日本の各地の農業試験場でも、イネやダイズの不耕起栽培の試験をしています。
海外では大面積での農業をするために、飛行機で種を撒くような大規模な不耕起栽培をしているところもあります。
中国では免耕栽培と称して進めている地域もあり、指導機関が試験をしています。

 不耕起栽培がもたらすもの

不耕起栽培に期待されているものは、多くは省力化と省コストですが、私達が稲作で不耕起栽培を進めてきた結果、思わぬ贈り物をたくさん得たのです。 ・田んぼに従来から住んでいた生きものが増えたり、戻ってくる
 ・土壌の構造が変化して田んぼの水持ちが変わる
 ・田んぼが酸素をたくさん吐き出すしくみが生まれる
 ・水がきれいになる仕組みが隠れている
 ・メタンガスの発生が少なくて済む
 ・なによりも嬉しいことに、お米の味がたいへんおいしくなったのです。

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